刺身に見る日本料理の哲学

さてさて、小噺的に職人が使う言葉について書いてきましたが、

ここらでまたちょっとテーマを変えていきましょう。

今日は刺身のお話です。

刺身魚の生食、

と思ってらっしゃる方も多いようですが、

実は日本料理のお造り刺身では、

生のそのままを出すだけでなく、

手をかけたものを使うことも多いです。

鯖や、ヒラメの昆布、

真鯛の湯霜、のどぐろアカムツの焼き霜などは

その代表的なものですね。

また、魚の生食文化が日本独自のもの、

と考えている方も多いのですが、

そうではありません。

お隣の韓国には活魚を使った

フェがあります。

ちなみにユッケは肉刺身という意味

地中海沿岸でも魚の生食はしますし、

日本独自ということではありません。

逆に、中国などでは

何も手を加えず生で食べるというのは、

賤しい食べ物

身体を冷やさないという

中国医学からの考え方もベースにあるようです。

では、なぜ刺身という料理が

日本料理ではメインの位置付けになったのだろうか?

と思うのですが、

これは、日本料理の基本である

素材の味を活かす、引き出す

というところにあるのでは、

と私は考えます。

だから、

ただ単純に鮮度の良さにこだわるわけではない。

実際、活魚の刺身というのは

身がゴリゴリして美味しく感じないものが多いです。

そういうものは、少し寝かせて

熟成してから使う。

もちろん、活けがよい食材もあります。

そういう食材は、

できるだけ活け物の良さを出せるように

お出しする直前でさばく。

鯖はて寝かせることで旨みが引き出し、

醤油と相性バッチリなマグロは、漬けにして。

身の質や食感に合わせて切り方を変え、

その食材の美味しさが、最も伝わる形にする。

その食材の味を引き立て、

季節を感じさせる薬味を添える。

すべて、

刺身をつくる上でテーマとなっているのは

その食材の良さ、美味しさを引き出す

ということなのです。

ただ切って生で出しているわけではない。

だからこそ、奥深く味わい深いのです。

こうした考え方がわかると

お造りが日本料理のメインディッシュであることも

理解できると思いますし、

お造りこそ、

日本料理の哲学を明確に表している、

と言えるのではないでしょうか。

次回は、

刺身の由来について書きたいと思います!